改変されるのを防止したり、他所に修正可能なデータとして流出される可能性を排除するために私たち専門職は完成品又はドラフトの契約書をPDFファイルで相手方に送る場合があります。
私も過去そうしてきましたし、現在もそういった対応を執ることがあります。
ですが、こと専門職同士が契約書を作り上げていこうという場合には通常、PDFではやり取りすることがありません。
Word版でやり取りし、変更履歴を保存すれば、誰がどこを削除加筆したのかが一目瞭然だからです。
ましてや、専門職同士なのに、一方が作成したPDFについて手書きで修正してこい!ということは普通は言ってこないです。
なぜなら、
契約書の修正っていうのは文言だけの修正だけでは留まらず、条文の入り繰りまでに影響する場合がほとんどだから。
手書きで修正できるのはせいぜい誤字脱字程度。
条項を下げて、1条分追加して、条項の援用の関係を作りなおしてといった作業を手書きで出来るわけもなく、著しく非効率で、かつそれを依頼してくる専門職って契約書の作り方そのものが分かっていない可能性が高い。というか、分かっていない。
そもそも契約書っていうのは、お互いの意思の合致を書面に落としただけのもの。大切なのは契約書なんかじゃなく、契約そのものなんですよ。意思の合致に至るまでは何度でも、何回でも修正して構わないし、むしろ修正するべきなんです。一度書面化した契約書はあくまで叩き台として存在するだけ。
なぜかというと。
お互いの思っていることって眼に見えないでしょ。観念に過ぎないのだから。だから目に見えるように文字にしたのが契約書なんですよ。
といっても、一般の方にはそのあたりの感覚が分かりづらいと思うし、”そういうものなのか”と思ってしまうのも無理がない。
しかし、専門職同士が契約書の作成を手がけている関係性においては、PDFに手書きで修正させるというのはあまりよろしい態様とはいえないだろう。
このブログは、行政書士だけではなく他の専門職の方もご覧になっている。もしもあなたが専門職と絡んで契約書を作成しているのなら、どうか「PDFに手書きで修正してくれ」という非礼な振る舞いはせずに、フツーにWord版で送ってあげましょうね。
逆にいえば、嫌な相手には、契約書をPDFで送って「手書きで修正してくれ!」って言いましょう。かなりの心象を悪化させる効果はあります。
もちろんそんな方法は私はしませんし、オススメもしませんが。
行政書士阿部総合事務所 行政書士阿部隆昭