【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ7回目の今回は、「家族信託」はなぜ注目を浴びているか?について書いてみたいと思います。
信託は、信託銀行などが行う「商事信託」と、業として行うことを予定していない「民事信託」とに分かれます。
皆さんがよく聞く信託銀行の「遺言信託」が商事信託の代表例です。
対して、家族間の財産管理等を目的として業として信託をするのではないものを家族信託と呼びます。
私は、信託法が改正された平成18年以前から信託業務に取り組んでいますが、当時は民事信託という言葉さえ知られていないぐらい馴染みの薄いものでした。
それが、この数年の間に信託のメリットを知っている一部のコンサルタント業者が富裕層にアプローチをし、家族信託を組成するケースが増えてきたのです。
その大きな理由の一つが成年後見制度の普及にあると私は思っています。
なぜかといいますと、成年後見制度は、本人の権利利益の保護をお題目に著しく不自由な制度になっているという側面があるからです。
もちろん今でも制度として残して置かなければならないものですが、成年後見制度だけでは円満な財産承継を組み立てることが難しいケースがこれまでも存在しました。
それが、信託法改正を契機に、それまでグレーとされてきた部分が明文化され、一般の方にもより使いやすい信託制度に生まれ変わったのです。
これまで、【超簡単家族信託】WEB講座を続けてまいりましたが、「信託って何の役に立つの?」と感じている方も多いと思います。
明らかなメリットが感じられなければ、そもそも信託に興味など沸かないですよね。
信託の活用事例はいくつもあるのですが、その中でも信託を利用することで高齢者問題が上手に解決できる事例をお伝えします。
認知症の不安を抱える高齢者のご家族がいるとしましょう。
お父さんは賃貸アパートなどの収益物件を持っています。
現在の権利主体はお父さんですので、認知症等で判断能力が失われると賃貸アパートの管理などに支障が生じることが容易に想定されます。
そうかといって、判断能力が失われていない現時点では成年後見制度(法定後見)を利用することができません。
この状態ですと、お父さんお認知症の不安に怯えながら毎日を過ごすことにもなりかねません。
判断能力が失われつつあるタイミングを見計らって間髪入れずに後見を申立するのでは家族の不安はいつになっても消えません。
このときこそ、家族信託を有効に機能する場面です。
高齢者の認知症対策としての信託の活用は、家族信託の中でも比較的簡単なスキームで円満な財産承継が可能になります。
委託者(任せる人)は、お父さんです。
受託者(任される人)は、子どもにします。
そして、
受益者(信託の利益を受ける人)は、お父さんにするのです。
委託者兼受益者がお父さんであるので、実態上、経済的価値の移動がなく、贈与税も課されません。
お父さんが元気で契約能力が残されているうちに、この家族信託を組成することによって、いつお父さんが認知症になっても心配ありません。
収益不動産を始め信託契約で信託財産された財産は、子どもの手によって管理・処分といった法律行為がなされるからです。
いかがでしょうか?
家族信託の利用事例としては最も簡単なものですが、これだけでも信託のメリットを感じられると思います。
【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ7回目のまとめ
家族信託の仕組みを利用することで、親の認知症の不安に怯えることなく家族間の円満な財産承継を図ることができる。
次回、【超簡単家族信託】WEB講座シリーズ8回目は、信託の基本的な仕組みをおさらいします。