「血塗られた手は遺産を取得することができない」
と言われても何のことやら分からないと思いますが。
ゲルマン法の法諺の一つです。
法律の分野の格言みたいなものですね。
「血塗られた手は遺産を取得することができない」というと、なんだかオドロオドロしいです。
「血塗られた手」と象徴的に表現された行為をした者は相続することができない、という格言。
同じ趣旨の規定が私たちの法律にも定められています。
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
相続に関して悪いことをした人(血で手をそめた人)は、法律の規定によって相続権を剥奪されてしまう制度です。
「相続欠格」という名前だけは聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
相続欠格は、主に二つのグループに分けられます。
・被相続人(死亡してしまった人)などに対して命を侵害する行為に及んだ者・遺言書について違法に干渉した者
民法に規定された相続権剥奪制度である「相続廃除」と違って、法律上当然に剥奪されるのが「相続欠格制度」
それだけに相続欠格とされる行為は重大なものになっています。
例えば、
財産目当てで親を殺めてしまった息子は、本来だったら相続人となる息子は相続欠格の規定によって相続人となることがない。
まさに、「血塗られた手は遺産を取得することができない」となるわけです。