遺言書作成に関わる方には大きな判決が出されましたね。
業務経験18年ですが、「花押」が押された遺言書は未だにお目にかかったことはありません。
「花押」って何?という方にはこちらのWEBサイトが分かりやすい。
花押は,文書の作成の真正を担保する役割を担い,印章としての役割も認められており,花押を用いることによって遺言者の同一性及び真意の確保が妨げられるとはいえない。そのような花押の一般的な役割に,a家及びAによる花押の使用状況や本件遺言書におけるAの花押の形状等を合わせ考えると,Aによる花押をもって押印として足りると解したとしても,本件遺言書におけるAの真意の確保に欠けるとはいえない。したがって,本件遺言書におけるAの花押は,民法968条1項の押印の要件を満たす。
1.「花押を書く」と、「印鑑を押す」は同じ行為ではない
花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。
民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。
確かに私たちは、文書はこれで完成!というときに、印鑑を押しますよね。
そういった慣行や法意識はあります。
法律文書である遺言書に印を押すということは、文書が完成したということを担保しているもの。
法律文書である遺言書に花押を書いても、それは文書を完成したという意で書いたものとは認められないということです。
「花押」を説明したWEBサイトでは、署名として書かれるとあります。
文書の作成終わりに「署名」をすることがないので-つまり、それが判決のいう「慣行」がないということ-よく分かりませんが、花押を多用する方にとっては文書完成の意味、印鑑の押印と同じように考えているのかもしれません。
ただ、それが慣行と認められる程度には至っていない、という趣旨なのでしょう。
遺言書の無効を争った判決は数多くありますが、民法の規定通りに遺言書を作らないと争いになります。
相続争いを防ごうと思って遺言書を認めたのに、結果、その遺言書が相続争いの火種になることは珍しくありません。
公正証書遺言の場合には、形式不備で無効になる遺言書はありませんが、自分一人で作る遺言書の場合には隠れ無効が多数存在していると思われます。
なぜ、「隠れ」なのかというと、遺言書が効力を発生するのは遺言者が死亡したときです。
遺言者であるお父さんが亡くなって、遺言書を開けた時に不備に気づく、あるいは家庭裁判所の検認や、登記申請の際に手続きがストップして発覚する。
そう、遺言を作る人が作ったときには、無効かどうかはわからないのです。
大抵は封筒に入れられていますよね。
無効かもしれないけれど、封筒の中に「隠れ」ているのです。
だから、「隠れ無効」の遺言書。
「隠れ無効」は一般用語ではなく、私が依頼者の方に説明すると際や、遺言書の講座のときに説明する際の用語です。
少しの遺言書作成費用をケチったばかりに相続争いに巻き込まれる。
これもまた人生。
というわけにはいきませんよね。
10万円の遺言書作成費用がご家族の安心に変わる。
トラブルの火種になるよりは余程安心して余生を過ごせるというものです。
あなたのお金を家族の安心に変える遺言書を作りたい方はご相談ください。
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