個人ギター工房、といっても、音楽やギターに詳しくない人にピンと来ない話だと思います。
私も音楽を趣味にしていますので、オーダーでギターを作ることが出来るのか、と思って幾つかのクラフトショップを調べたことがありました。
一般的に知られている大手、ギターでいえば、フェンダーとかギブソンとかではなく、個人のクリエイターが作成しているギターブランドです。
ギターではなくても、こういった世界は他にもありますよね。
SNSでたまたま見かけたのですが、個人ギター工房でオーダーしたギターについて後発的な事象があり、それについて購入した消費者とトラブルになっているという。
今回お伝えしたいのは直接的にそれらについて、というのではなく、あくまで経営的な視点ですのでなるべく抽象的に話そうと思っています。
経営=「商品力」×「運営力」×「販売力」
だと仮定します。
今回の個人ギター工房には、アフターサービスに課題があったため、上記の「運営力」が欠けていたことになります。
現実に購入した消費者がいる以上、「商品力」は魅力的だったと思いますし、それらを認知させるための「販売力」もあったので、消費者の目に留まって、購入という決断に至るまでになりました。
さて、この「運営力」ですが、どうしても、「商品力」や「販売力」よりも力の入れ度合いは下のランクに考えられがちです。
「商品」がよくなければそもそも売れない、と考えがちですし、せっかく優れた商品なのに売れないのはその魅力が伝わっていないからだとも、考えます。
なので、商品の魅力を磨き、それを販売する方に力が入るので、どうしても総合力である「運営」は後回しになります。
特にそれが、個人経営ならば、尚更です。
人間一人に出来る、気を配ることには限界があります。
とはいえ、私たち一般消費者には、販売する側のそんな事情は全く関係ありません。
30万円の高額ギターを購入したのであれば、それなりの製品の品質やアフターフォローや顧客サービスなどがあって当然、という「期待」を持ちます。
個人ギター工房とすれば、
これまでの知見を最大限投入して最高のプロダクトを提供しているのだから、大手のようなアフターサービスについては提供していない。
購入者からすれば、
一生ものと考えている高額なギターをオーダーしているのだから、ギターとしてのクオリティーが完璧なのはもちろん、それ相応のアフターサービスは当然あって然るべき。
といったような「期待値のズレ」が生じます。
今回のことに限らず、この「期待値のズレ」という視点を持つことは経営的にとても大切です。
「期待値のズレ」は、顧客とのトラブルを生み出す原因にもなりますが、実は「運営力」によってあらかじめ期待値のズレを最小化することも可能です。
たとえば、購入後に想定されるトラブルについて、列挙し、それに対応する文書を購入者に交付する、あるいは同意してもらう。
もちろん、そんなことはやっています、と販売者側は思うかもしれません。
それでもなお、そういったトラブルが起きるということは、それが購入者に伝わっていないのかもしれません。
トラブルが起きた後、
「それは書面で事前に伝えてありますので」
と言える場合であっても、顧客サービスから考えるとそれはあまり美しくないですよね。
せっかくのオーダー品なのですから、お互い満足して終わりたいものです。
満足度が高ければ高いほど、顧客としては口コミをしたくなります。
また、それが逆であればあるほど、マイナスの口コミをしてしまうかもしれません。
今回は、経営という視点から、わかりやすいように「個人ギター工房」を例にとってお話ししましたが、他のクリエイティブ系のものは全般的に適用できます。
「商品」ではなく、ホームページ制作などのWEBサービスや、コンサルティングサービスでも同じですよね。
「運営力」に手薄になりがちな個人経営の事業者ほど気をつけたいですね。
行政書士阿部隆昭