序章:あなたは「食パン派」か? それとも「フランスパン派」か?
朝食の定番であるパン。
フワフワで口当たりが良く、袋を開けた瞬間から甘い香りが広がる食パン。
一方、硬くて噛みごたえがあり、噛めば噛むほど深い味わいがにじみ出るフランスパン。
あなたはどちらを選びますか?
この問いは、単なる好みの問題ではありません。
実は、あなたがどんな価値を好み、どんな成果の形を信じるかに深く関係しているのです。
食パンには、最初から「甘さ」が用意されています。バターや砂糖がたっぷり練り込まれ、万人受けする「すぐに満たされる」構造です。
対してフランスパンは、見た目も質素で、糖分すら含まれていません。しかし、噛み続けることで、唾液の酵素とパンのデンプンが反応し、甘みが立ち上がってきます。
この違いに、どこか見覚えはありませんか?
ビジネスの世界や人生の選択においても、同じ構図が存在します。
成果は「最初からあるもの」なのか。
それとも、「行為を通して生まれてくるもの」なのか。
フランスパン派であるということは、「味わう時間」や「積み重ねの喜び」に価値を置く生き方を選んでいるのかもしれません。そしてこれは、単なる朝食の好みにとどまらず、あなたの思考スタイル・経営スタイルの根幹を映す鏡なのです。

第1章:科学ではなく体験──「味が生まれる」構造の正体
フランスパンは、小麦粉・塩・酵母・水という極めてシンプルな材料だけで作られます。バターも、砂糖も、卵もなし。いわば“引き算”の料理です。
しかし、硬い外皮(クラスト)を割り、もそもそと咀嚼し始めると、次第に甘さがふわりとにじみ出るような感覚に襲われたことはないでしょうか。これは錯覚ではありません。実際に起きている「化学反応」なのです。
唾液中の酵素「アミラーゼ」が、パンのデンプン(炭水化物)を麦芽糖(マルトース)という糖に分解します。このプロセスが口の中で進行し、甘さとして知覚されていくのです。
つまり、糖は最初から含まれていたわけではありません。あなたの咀嚼が、それを作り出したのです。これは、食べるという行為における“能動的な共創”に他なりません。
第2章:「与えられた甘さ」 vs 「引き出す甘さ」
ここで、食パンとの比較を通して、その対照を明確にしてみましょう。
観点 | 食パン(糖入り) | フランスパン(糖なし) |
糖の出現 | 初期状態から加えられている | 咀嚼によって後天的に発生 |
甘さの性質 | 一口目から甘い(受動的) | 噛み続けて得る(能動的) |
報酬のタイミング | 即時(快感ドリブン) | 遅延(満足感ドリブン) |
体験との関係 | 快楽消費、短命 | 関与型、持続性あり |
この比較を読んだだけで、あなたが何を求める人なのか、どんな経営スタイルを選んでいるのかが、すでに輪郭を帯びてきているのではないでしょうか。
第3章:「構造化された報酬」──LDAMの出番
LDAM(LinkDrive by Abe method)が提唱する経営の根本思想は、ここにあります。
「行為から構造へ。構造から関係性へ」
補助金を“最初から甘さとして注入された食パン”のように扱う企業は、しばしば“依存的”な経営に陥りがちです。
一方、自社の“咀嚼”──地道な改善、関係性の構築、問題の深掘り──を通して価値を生み出す企業は、フランスパンのように自らの構造の中で甘さを生成できる組織です。
LDAMは、そのような経営設計を支援するために存在します。
与えられた支援ではなく、引き出された可能性を可視化することを目指します。
第4章:報酬系ドリブン社会と「味気なさ」の正体
私たちは今、報酬系ドリブンの社会に生きています。
SNSの「いいね」、即日発送、定額動画サービス、時短料理──すべてが「すぐに成果を得る」構造です。
しかし、その裏でじわじわと失われているものがあります。
それは、「味わう時間」「試行錯誤する余地」「体験から学ぶ深み」──
言い換えるなら、“自分の中で甘さを生成する機能”そのものです。
この社会は、あらゆる「味」を先回りして与えすぎたために、何を食べても“味気ない”と感じるのかもしれません。
第5章:「味は構造から生まれる」──経営における再設計
あなたの会社は、どんなパンの味がするでしょうか?
- すぐに売れるが、すぐに飽きられる商品ライン
- 成果が速く出るが、疲弊して持続しない組織文化
- 見栄えは良いが、芯がない事業戦略
これらはすべて、“甘さを初期投入した食パン型経営”の構造です。
一方、以下のような経営はどうでしょう?
- 仕込みに時間はかかるが、長期で信頼されるサービス
- 一見地味でも、社員と顧客の「噛むプロセス」が内在している商品設計
- 補助金を目的ではなく手段として、自社構造を育てるために活用する姿勢
これこそが、“フランスパン型経営”なのです。
第6章:甘さはあとからやってくる──時間芸術としての経営
フランスパンの甘さは、「最初からある味覚」ではありません。
それは「時間」と「関与」と「身体的プロセス」の集積がもたらす芸術的報酬です。
経営も同じです。
- 時間をかけるからこそ見えてくる世界
- 継続的な観察と微調整から生まれる質的転換
- 投資の成果が、ある日ふと“甘く”感じられる瞬間
それは、作られた“商品”ではなく、育てた“関係性”にこそ宿るのです。
終章:あなたのフランスパンは、もう焼かれているかもしれない
あなたが日々噛んでいるもの──それはパンではなく、仕事かもしれません。対話かもしれません。事業計画かもしれません。
甘さが最初からないからこそ、怖い。
でも、怖いからこそ、甘さに気づいた瞬間の喜びは本物です。
LDAMは、そんなフランスパン型の経営を支援する方法論です。
すぐに成果は出ないかもしれない。しかし、本質的な「味覚」こそが、あなたの組織を次のフェーズへと導くでしょう。
行政書士阿部総合事務所 行政書士阿部隆昭