ごく一部の方はご存知ですが、行政書士阿部隆昭は元々はメガネ販売員です。
都内の某有名百貨店のメガネ売り場で4年半ほど勤務しておりました。
つい先日、メガネをある店で購入しまして。
「調整は自分で出来るのでしなくていいです」
と言った瞬間、販売員さんがこれまでにない笑顔を見せたとき、
あーそうか!
と思い出しました。
メガネの調整って販売員はみな避けたがる。
調整している時間があったら売上を立てたい
店によって違うと思いますが、販売員にはノルマが設定されていることも多く、調整をしている間は売上が立たないので、一刻も早く調整を終わらせて販売に戻りたい
といった気持ちにどうしてもなりがちです。
私が現役のときもそうでした。
メガネの調整は、そのメガネを販売した人がするのが当たり前なのですが、ノルマを達成していない人は、担当したお客さまがメガネの出来上がりを引取りにいらしているのを知っていながら知らんぷりをして、他の人に調整をさせて自分は販売に立つ、そんなことも横行していました。
それほど、メガネの調整っていうのは時間も取られるし、販売員にとっては避けたい事情があるのです。
だから、販売員さんからすれば、メガネの調整がないお客さんというのは喜ばれる。
一刻も早く売上を立てたい、だからメガネの調整はしたくない。
実はコレ以外に、販売員がメガネの調整を避けたがる大きな理由があります。
それは。
メガネの調整はKKDの世界だから難しい。だから避けたがる
私はメガネ販売員を辞めてから、私にかかわる人のメガネの調整は全て私が行っています。
なぜかというと。
事情を知っているので他人に任せるのがコワイから。
メガネの調整はKKDの世界です。
K 勘
K 経験
D 度胸
ほんの少しの研修の後、店舗に配属されてからすぐに調整が出来るようになっていたと思います。
正直、メガネの調整で苦労した覚えがない。
そういう意味では、
Kの勘と、Dの度胸は最初から持ち合わせていて、もう一つのKの経験は知恵で補っていたと思います。
上記のように、売上を立てたい先輩方が担当したお客さまの調整役を頼まれることも多かった。
先輩にとってみれば便利な存在です。
自分は調整に時間を立てずに売上を立てられるし、難しいメガネの調整をすることもないし、後輩だからお願いしても断ることがない。
おそらくメガネ販売員の99.9%は、メガネの調整を苦手にしていると思う。
出来れば調整なんてやりたくないと思っている。
何が難しいのかというと、そのお客さまそれぞれ全てに調整の仕方があるから。
メガネから耳までの距離によってテンプル(メガネのつるですね)を調整し、
鼻の形に合わせて鼻あてを調整し、
レンズの特性にも配慮し、
といった細かい調整をしないとメガネのかけ心地は良くなりません、ホントはですね。
まさにKKDの世界です。
難しいからメガネの調整を避ける。
となると、Kの経験がいつまでたっても具わることがない。
調整を避けている限りは、永久に上手にならない。
だからメガネの販売員で調整を出来る人が極端に少ないのです。
大型ショッピングセンターなどに入っている定額制のメガネ量販店などで調整している姿を見てみるといいですよ。
自信を持ってメガネを調整しているかは態度を見て分かる。
というか、今の店舗はパーテーションの裏で調整をされてしまうので、調整をしている販売員の姿は見ることが少ない。
私が現役の頃は、お客さまの目の前で調整をしていたので、お客さまはそれこそ調整の一部始終を見ることになります。
逃げ場がありません。
大げさかもしれませんが、-当事者からすれば決して大げさじゃないです-一対一の真剣勝負です。
扱っているのは、お客さまの大切なメガネです。
もしかしたら、お父様、お母様の形見のメガネかもしれません。(こういったお客さまは結構いらっしゃいました。)
調整の際に、壊してしまったら、それこそオシマイです。
お客さまの目の前なので、「元々壊れていました」といった言い訳が出来ない。
だから真剣。
だけれども、お客さまとの大切なコミュニケーションの時間でもあるし、退屈させてはいけないので世間話などもする。
でも、意識は手先に集中しています。
調整が難しいお客さまには、30分以上かけることもざらにありました。
例えば、ラジオペンチでメガネの枠をつまんで微妙な力加減で調整をするのですが、大切なお客さまのメガネを傷つけないようにしないといけないわけです。
なので、それなりの工夫をしますが、残念なことに一部の量販店ではそれさえなされていないことが多い。
私は元プロなので、どのような調整をされたのかは、そのメガネを見れば分かる。
可哀想なメガネの調整され方をみると、
やっぱり自分で調整しよう、って思います。
観察力と洞察力が行政書士業務には必要だなと再認識したのです。
が、実はメガネ販売もそうで、といいますか、およそあらゆる職業をうまく立ち回るためには観察力と洞察力は必要なんですね。
サラリーマンだって、上司や同僚、取引先との関係性を良好に保ちつつ仕事を回していくには、それぞれのパーソナリティに対する観察力や洞察力は必要。
で、特別な事情がない限り、観察力や洞察力は身に付けるのが難しく、時間がかかる。
だから、それを持ち合わせている人は希少価値があると言えるのだけれど。
「KKDの世界」というと、なんだか勿体つけたような新人を排斥するような感じを受けるから嫌なのだけど、全てが再現性のあるものに纏められるわけでもないので、どこの世界でもある程度はKKDはあるんだろうなあ、と思いました。
退職はしましたが、未だにメガネは好きなので、たまには行政書士業務と無関係なメガネ関連の記事も書いていこうと思っています。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭
あっ、最後に言っておきますけど。
ベテランだからといって、メガネの調整が上手だとは限りませんからね。
KKDの世界なのだから、ベテランを指名すれば大丈夫、というわけにはなかなかいきません。
それについても、またいつか書きましょう。