一般の方になかなか伝わりづらく、誤った理解がされている「後見人の報酬」について触れてみたいと思います。
昨日参加した「障がい者のきょうだいの立場から考える後見制度」のセミナーでも真っ先に質問された疑問点でもありました。
成年後見制度を利用したいが、身内で後見人としての仕事は出来そうもない
という方は多くいらっしゃいます。
そうかといって、専門家に支払う報酬の原資になる被後見人の財産も無いので弁護士、司法書士、行政書士などの専門家にお願いすることが出来ない。
といった状況の場合には、成年後見制度を利用したい、または利用すべき状態であるにもかかわらず、利用しないという選択をしてしまいがち。
一つの視点は、
「報酬」と「費用」とを分けて考えること。
一般の方が誤解されてしまうのは無理もないですね。
「報酬」とは、後見業務をした事によってもらえうお金。
仕事をしたことの対価です。
皆さんが働いてもらう給料と同じです。
成年後見制度が裁判所のレールの上に乗って動いている以上、「報酬」についても裁判所のルールにしたがって運用されています。
街の法律家に依頼するように、専門家が自由に「報酬」を決めることは出来ません。
成年後見人に支払う報酬は、月額2万円が標準的なもの。
東京家庭裁判所の資料が公開されていますので確認することも出来ます。
成年後見人等の報酬額のめやす
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf
2 基本報酬
(1) 成年後見人
成年後見人が,通常の後見事務を行った場合の報酬(これを「基本報酬」と呼び
ます。)のめやすとなる額は,月額2万円です。
親族が成年後見人になった場合には「報酬」を受けることが出来ないのか?
といった質問もなされました。
なお,親族の成年後見人等は,親族であることから申立てがないことが多いのです
が,申立てがあった場合は,これを参考に事案に応じて減額されることがあります。
成年後見人の報酬は原則的は被後見人の資産から支払うことになります。
後見人になっている親族の報酬は、被後見人の資産から払うことになると、結局はそれが被後見人の資産を減らす行為になるので報酬を請求しないことがほとんどなのです。
それでも、後見事務が困難を極めることが想定される場合などは、家庭裁判所の判断によって認められることもあります。
リーガルサポート名古屋支部 成年後見Q&A
後見人の報酬は、親族の後見人であっても請求できますか?
はい、第三者の専門職後見人と同様に、裁判所に「報酬付与の申立」をすることによって、裁判所が決定した金額の報酬をもらえます。
親族後見人は他の親族と比べて、後見人として財産管理や身上監護に関する様々な義務や負担を背負い、また後見人としての法的責任を負うべき立場にあるためです。
ただ、報酬額自体は、支援されるご本人(被後見人等)の収入・財産の額や後見事務の労力など個々の事案に応じて裁判所が職権で決定しますので、後見人が自ら報酬の額について裁判所に希望したり請求することはできません。
「費用」は、後見事務を行ううえで実際にかかる費用。
交通費等の実費のことですので、「報酬」と違い「費用」については被後見人の資産から問題なく支出出来るのが原則です。
それと、これだけは絶対に覚えておいて欲しいのですが、
一旦、後見人になったら、そう簡単には辞めることが出来ない。
ということです。
よくあるケースは、
実際に成年後見人になってみたら、思いの外、後見事務が複雑でこんな仕事はやってられない。
だから辞めたい。
後見事務が大変だから辞めたい
と裁判所に言ってもそれだけの理由では辞められません。
先ほども書いたように、成年後見制度として裁判所のレールに乗った以上、裁判所のルールにしたがって運用されます。
裁判所としては本人である被後見人の保護を何よりも優先するのです。
後見事務が大変だからもう辞めたい、といって辞められてしまったら、その後の本人の面倒はどうするのでしょうか?
そこを心配するのです。
弁護士、司法書士、行政書士に成年後見人になってもらうと報酬がたくさんかかる。
だから、親族である私が後見人にならなきゃ!
と思って後見人になってしまう方が多いのですが、一旦後見人になったら簡単には辞められないということだけは覚えておいてください。
そんな大切なことなら、裁判所が教えてくれるだろう、という期待が働きますが、実際にはそうもいかない事例もあるようです。
成年後見制度を利用したほうがいいのかどうか?
成年後見制度を利用するといくらかかるのか?
親族が成年後見人になると報酬はもらえるのか?
といった疑問が持っていらっしゃる方は、お近くの自治体の相談窓口や地域包括支援センターなどに相談に行かれたほうがいいですね。
自分だけで判断するのはとても危険です。
他に良い選択肢があるかもしれません。
お知り合いの専門家がいればその方に相談してもよろしいと思います。
行政の相談窓口や地域包括支援センターは、どうしても行政の枠組みで回答をする関係上、問題解決の選択肢を提示することが難しいという側面があるのです。
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭
※一般の方にも分かりやすく説明するために用語の使い方に工夫をしています。