
世界的なタレント獲得競争が激化する中、2023年4月に導入された特別高度人材制度(J-Skip)は、 高度専門職の枠組みを補完し、要件を「年収」と「学歴・職歴(経営管理は経験要件等)」に整理して申請しやすくした制度です。 一方で、企業側の現場では「要件はシンプルだが、区分選定と立証でつまずく」ケースが起きやすいのも事実です。
1. 2025年の統計:J-Skipは「一定規模」で積み上がり始めています
出入国在留管理庁の公表資料に基づくと、認定件数は導入以降、段階的に積み上がっています。 ただし、ここで重要なのは「件数の多寡」よりも、採用パッケージとして企業が説明できる制度になった点です。
※上記のうち、同日時点で日本国内に在留している者は606人(出典資料の定義に基づく)
▶ 出典:出入国在留管理庁「特別高度人材制度(J-Skip)の認定件数(令和7年6月末時点)」2. 採用担当者が押さえるべき「3区分」と年収要件(区分の取り違いが一番危険)
J-Skipは要件が整理されている反面、活動区分(イ/ロ/ハ)の選定を誤ると、説明の整合が崩れます。 「候補者の肩書」ではなく、実際の職務内容から区分を確定するのが基本です。
| 活動区分(高度専門職) | 主な経歴要件(概要) | 主な年収要件(概要) |
|---|---|---|
| 高度学術研究活動(イ) | 博士号相当等(学術研究としての要件) | 年収2,000万円以上 |
| 高度専門・技術活動(ロ) | 修士号取得 等 または 実務経験10年以上 | 年収2,000万円以上 |
| 高度経営・管理活動(ハ) | 経営・管理の経験要件等(申請類型に応じて整理) | 年収4,000万円以上 |
※上表は「社内説明用の最小限の整理」です。実務では、職務内容・組織上の位置づけ・雇用契約の記載・報酬の根拠を揃え、区分と矛盾しない形で立証します。
3. 採用上の強い訴求点:「最短1年」で永住許可申請が可能(ただし“申請できる”と“許可される”は別)
候補者への説明で最もインパクトが大きいのは、要件を満たした高度専門職として一定期間活動することで、 永住許可申請までの期間が短縮され得る点です(最短1年の枠組み)。ただし、人事担当者が説明すべきなのは、 「1年で必ず永住が取れる」ではなく、1年で申請可能になり得るが、許可審査は別途あるという事実です。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}
- 申請要件 ≠ 許可保証: 1年で「申請の入り口」に立てても、許可には別途、素行・生計・公的義務(納税・社保等)の審査があります。
- 公的義務の履行: 未納や遅延があると、不許可リスクが高まります。本人任せにせず、入社後の案内・確認フローを整えるのが安全です。
- 生計の安定性: 申請時点の雇用条件・職務内容・報酬根拠が整合していることが重要です(「当初の説明」と「現場実態」のズレがあると説明が苦しくなります)。
4. 審査の急所:年収の「定義」と「立証設計」(高年収層ほど“証拠の組み方”が重要)
高年収層の報酬体系は、給与・賞与・各種手当・株式報酬(RSU等)などが組み合わさり、見た目ほど単純ではありません。 そのため実務では、「年収の根拠」と「支給条件」を、雇用契約・社内規程・支給実績(または見込み)として一貫して示す設計が重要になります。 なお、海外法人給与や株式報酬の取り扱いは、支払主体・課税関係・契約関係により評価が分かれ得るため、 “合算できる前提”で進めず、個別に立証方針を組み立てるのが安全です。 :contentReference[oaicite:4]{index=4}
「何を」「どの順序で」「どの整合で」出すかを誤ると、審査の説明コストが一気に増えます。
貴社のグローバル採用を「制度と実務の整合」で支えます
行政書士阿部総合事務所では、一次情報と実務の観点から、
区分選定(職務の翻訳)/年収立証(証拠設計)/採用後の運用(説明・社内連携)まで一体で整理します。
「この候補者はJ-Skipの射程に入るか?」
「雇用条件・職務内容の説明をどう揃えるべきか?」
まずは一次整理に必要な情報だけで構いません。現場の手戻りを減らす形で整理します。

