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【最高裁判決】認知症の人を介護する家族に監督責任ナシ、損害賠償責任ナシ?!|行政書士阿部総合事務所

March 2, 2016
約 8 分
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認知症男性の死亡事故、JRが逆転敗訴 最高裁「家族に監督義務なし」

認知症男性の死亡事故、JRが逆転敗訴 最高裁「家族に監督義務なし」認知症男性の死亡事故、JRが逆転敗訴 最高裁「家族に監督義務なし」
 
認知症の男性が徘徊中に列車にはねられて死亡した事故をめぐって、JR東海が遺族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は3月1日、家族に賠償責任はないとする判決を言い渡した。認知症の人を介護する家族の監督責任について、最高裁が判断を示したのは初めて。
 
 
責任能力がない人の賠償責任を「監督義務者」が負うと定めた民法714条をめぐり、認知症の人を介護する家族が監督義務者と言えるかが最大の争点となった。3月1日の最高裁判決では、上告した妻は監督義務者に当たらないと判断し、賠償責任もないと結論づけた。
 
 
認知症高齢者を介護しているご家族にとって、とても重要な判決がなされました。
 
認知症の人を介護するご家族は、法定の監督義務者に当たらないので、したがって損害賠償責任も負わないとする判決。
 
このニュース報道だけでは、この事件がもたらしたものは伝わってきません。
 
ニュース報道だけを読んでいると、認知症高齢者を介護している家族は監督責任を負わないと一律に判断してしまいそうです。
 
しかし、そこには様々な意見があり、監督義務者には該当するけれども本事案については監督義務を怠っていないので損害賠償の責任はない、とする裁判官もいらっしゃいます。
 
 
どのような状況にある方が、監督義務者になるのか?
 
監督義務者はどのような場合にでも損害賠償責任を負わなければならないのか?
 
 
そういったことが判決文の中の裁判官の補足意見を読むと理解できるようになります。
 
私たち行政書士のような「士業」だけではなく、ケアマネジャーやデイサービスなどの介護事業所のスタッフ、終活関連の業者さまなども目を通しておいたほうが良いでしょう。
 
判決文まで読む時間がない方のために各裁判官の補足意見の中で重要な部分を抜き出して掲載します。
 
中でも、大谷裁判官の最後の文、相応の注意義務を果たしていれば、免責の範囲を拡大することについて社会は受け入れるべきだろう、という意見。
 
とても感銘を受けました。
 
行政書士阿部総合事務所
行政書士阿部隆昭
 
 
 
 
 
 
 
最高裁判例
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85714
 
判決文
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/714/085714_hanrei.pdf
 
 
「監督義務者に該当しないから損害賠償責任を負わない。
のではなく、
監督義務者に準ずると認められるけれど、今回の場合は監督義務を怠らなかったので714条1項但し書きに該当し損害賠償責任を負わない。」
 

木内道祥裁判官の補足意見(PDF12ページ中段から)
 
精神障害者の日常行動を監視し,他害防止のために監督するという事実行為は成年後見人の事務ではなく,成年後見人であることをもって,民法714条の監督義務者として法定されたということはできない。
 
他害防止を含む監督と介護は異なり,介護の引受けと監督の引受けは区別される。
 
 
 
 
岡部喜代子裁判官の補足意見(PDF18ページ中段から)
 
ただ,その段階では介護を引き受けたものであって,必ずしも第三者に対する加害を防止することまでを引き受けたといえるかどうかは明確ではない。
 
徘徊による事故としては被害者となるような事故を念頭に置くことが多いであろうがその態様には第三者に対する加害も同時に存在するものであって,第三者に対する加害防止もまた引き受けたものということができる。
 
その態様が単なる事実上の監督を超え,監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる。
 
週6回のデイサービスの利用は,一般通常人としての徘徊防止措置としては相当効果のある対策を立てているといえよう。
 
第1審被告Y2は,Aの徘徊行動を防止するために,週6回のデイサービスの利用並びに第1審被告Y1及びBの現実の見守りと付添いという体制を組むことによって,Aの徘徊行為を防止するための義務を怠りなく履行していたということができるのである。第1審被告Y2の採った徘徊行動防止体制は一般通常人を基準とすれば相当なものであり,法定の監督義務者に準ずべき者としての監督義務を怠っていなかったということができる。
 
 
 

大谷剛彦裁判官の補足意見(PDF25ページ下段から)
 
精神障害者のうち,高齢者の認知症による責任無能力が問題とされるが,このような認知症による責任無能力者についての「生活,療養看護に関する事務」(身上監護事務)は,いわゆる介護(介護保険法等参照)として行われる。
 
 
介護は,介護労務という事実的行為と介護体制を構築する事務的行為とからなる。現在の高齢者介護は,個人や家族の介護労務をもっては限界があって,公的又は私的な保健医療サービス及び福祉サービスと緊密に連携して適切な介護を行う必要があり,また複数の関係者が分担,協力して行う必要もあり,要介護者の意思や,心身の状態及び生活の状況に配慮しつつ,これらサービスも利用し,関係者の協力を得て,人的,物的に効果的な介護体制を構築し,この体制が効果的に機能しているかを見守ることこそ重要であって,この介護体制の構築等は,医療保険機関や介護福祉機関との契約関係,また関係者への委任関係など,つとめて法的な事務との性格を有するといえる。
 
高齢者の認知症による責任無能力の場合に,身上監護事務を行う成年後見人が法定の監督義務者として想定される以上,成年後見が開始されていればその成年後見人に選任されてしかるべき立場にある者,その職務内容である適切な介護体制を構築等すべき立場にある者という観点から検討されるべきであろう。
 
 
成年後見人の選任に当たっての家庭裁判所の考慮事項は,民法843条4項に定められているが,被後見人についての生活,療養看護に関する事務を行う者は,実定法上,同法730条(直系血族及び同居の親族の相互の扶け合い),同法752条(夫婦の相互の協力,扶助)の定めと親和性を持つところから,第一次的にはこれらの者の中で,同法843条4項の事情を考慮して,能力,信用,利害関係等の点で成年後見人として選任されてしかるべき者が法定の監督義務者に「準ずべき者」として,責任主体として挙げられることになる。
 
高齢者の認知症による責任無能力者の場合については,対被害者との関係でも,損害賠償義務を負う責任主体はなるべく一義的,客観的に決められてしかるべきであり,一方,その責任の範囲については,責任者が法の要請する責任無能力者の意思を尊重し,かつその心身の状態及び生活の状況に配慮した注意義務をもってその責任を果たしていれば,免責の範囲を拡げて適用されてしかるべきであって,そのことを社会も受け入れることによって,調整が図られるべきものと考える。
 
 

行政書士阿部隆昭

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