
行政書士阿部総合事務所 行政書士 阿部隆昭
中小企業省力化投資補助金(一般型)第6回の申請支援を行った際、加点項目の確認・書類準備の場面で実際に起きたミスや詰まりポイントをご紹介します。
加点項目は採択可能性を高める重要な要素です。しかし要件の確認方法・必要書類の準備・判定基準の正確な理解など、つまずきやすいポイントが多くあります。
その1:事業場内最低賃金引き上げ加点の判定基準を正確に理解する
よくある状況
「事業場内最低賃金引き上げに係る加点」を取得するための判定基準について、曖昧な理解のまま申請に臨んでしまうケースがあります。
正確な判定基準
公募要領に明記されている要件は以下の通りです。
「2025年7月と応募申請直近月(2026年3月)の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額(63円)以上の賃上げをした事業者」
つまり確認すべきことは1点だけです。
| 比較時点 | 確認内容 |
|---|---|
| 2025年7月時点 | 補助事業の実施場所で最も低い時給の従業員の時給 |
| 2026年3月時点 | 同じく補助事業の実施場所で最も低い時給の従業員の時給 |
| 判定 | 2026年3月 − 2025年7月 ≧ 63円 であれば加点対象 |
重要:記入対象は「補助事業の実施場所」の従業員のみ
全従業員ではなく、補助事業を実施する事業場(工場・店舗等)に勤務する従業員のみが記入対象です。本社と工場が別の場所にある場合、本社勤務の従業員は記入不要です。
要件確認書の記入前に、まず「どこで補助事業を実施するか」を明確にし、その事業場に勤務する従業員のみを対象として賃金台帳を確認してください。
その2:最低賃金の計算に含める賃金・含めない賃金
よくある状況
要件確認書の「金額」欄に何を入力するか迷うケースがあります。特に多いのが「残業代(時間外手当)を含めるかどうか」という質問です。
最低賃金の対象となる賃金・対象外の賃金
最低賃金法に基づき、以下の区分で判断します。
対象となる賃金(含める):
- 基本給
- 各種手当(役職手当・職務手当・住宅手当・家族手当等)
対象外の賃金(含めない):
- 残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)
- 通勤手当
- 精皆勤手当
- 賞与・一時金
要件確認書の「金額」欄には、所定の基本給と固定的手当のみを入力してください。残業代を含めると時給換算額が高くなり、実態より有利な判定になってしまいます。
月給の場合の時給換算
月給制の場合、金額欄に月額・所定時間欄に月の所定労働時間を入力すると、Excelが自動で1時間当たり賃金額を計算します。この計算結果と最低賃金額を比較して「〇(最低賃金以上)」「×(最低賃金未満)」が判定されます。
その3:「加点」と「補助率引き上げ特例」は別物——同じ要件なのに申請が別々
よくある状況
地域別最低賃金に関する要件を満たしている場合、「加点を受けられる」ことは知っていても、補助率が1/2から2/3に引き上げられる特例が別途存在することを見落としてしまうケースがあります。
「加点」と「補助率引き上げ特例」の違い
実は要件はまったく同じです。しかし効果と申請箇所が異なります。
| 区分 | 効果 | 申請箇所 |
|---|---|---|
| ④地域別最低賃金引き上げに係る加点 | 審査での加点 | ❹加点項目のチェックボックス |
| 最低賃金引き上げに係る補助率引き上げ特例 | 補助率1/2→2/3に引き上げ | ❻最低賃金及び特例希望のチェックボックス |
補助率が2/3になると、補助金額が大幅に増えます。例えば補助対象経費が6,770,000円の場合、補助率1/2なら3,385,000円ですが、2/3なら4,513,333円と約113万円の差が生じます。
重要な注意点
公募要領には以下のように明記されています。
「申請をしていない特例や加点は受けることができませんので、応募申請の手続き時にはご注意ください。」
要件を満たしていても、申請時に両方のチェックボックスを入れなければ適用されません。加点のチェックだけ入れて特例のチェックを忘れた場合、補助率の引き上げは受けられません。
早めに要件を確認すべき理由
この要件の確認には、2024年10月〜2025年9月の各月の全従業員の時給換算賃金データが必要です。月ごとのデータを遡って確認するため、担当者への依頼・賃金台帳の確認に一定の時間がかかります。
申請準備の開始時点(申請締切の1〜2か月前)に要件を確認し、賃金台帳の確認が必要なものは早めに経理担当者へ依頼してください。
まとめ:加点項目で気をつける3点
| ポイント | 対処法 |
|---|---|
| 事業場内最低賃金は「63円以上」が判定基準 | 2025年7月と2026年3月の最低時給を比較する |
| 最低賃金の計算に残業代は含めない | 所定の基本給・固定手当のみで計算する |
| 「加点」と「補助率引き上げ特例」は別々に申請が必要 | ❹と❻のチェックボックスを両方入れる |
加点項目は「取れれば採択に近づく」ものですが、要件の確認・書類の準備を後回しにすると締切直前に間に合わなくなります。また補助率引き上げ特例のように、見落としやすいながらも金額インパクトが大きい制度もあります。申請準備の最初の段階で加点要件を整理しておくことが重要です。
省力化補助金の申請をご検討の方は、ご相談ください。
シリーズ一覧
- ①電子申請システム操作編(公開済み)
- ②書類作成・数値編(公開済み)
- ③書類準備・PDF編(公開済み)
- ④加点項目編(本記事)
シリーズ一覧
- ①電子申請システム操作編(公開済み)
- ②書類作成・数値編(公開済み)
- ③書類準備・PDF編(公開済み)
- ④加点項目編(本記事)



