小規模事業者持続化補助金 第20回で「賃金引上げ」は何が変わったのか

第20回公募で、賃金引上げの要件が大きく変わりました。
「賃上げに取り組む事業者を支援する」という方向性は第19回と変わりません。ただ、何をもって「賃上げ」とみなすか——ここが根本から変わっています。
第19回と第20回、何が違うのか
第19回の要件はシンプルでした。
賃金引上げ特例は「事業場内最低賃金を申請時より+50円以上」。加点は「+30円以上」。つまり、事業場で最も低い賃金をいくら引き上げたか、それだけを見ていました。
第20回は違います。
特例の要件は「従業員1人あたり給与支給総額の年平均増加率3.0%以上」。加点は「同2.0%以上」。時給をいくら上げたかではなく、会社全体として給与支給総額をどれだけ増やしたか——そこを問われます。
給与支給総額とは何か
給料、賃金、残業代、賞与が含まれます。福利厚生費、法定福利費、退職金は含まれません。
従業員に実際に支払った額の合計を、人数で割って確認する。それが今回の判定軸です。
なぜこの変更が申請実務に響くのか
第19回は「申請時点で直近1か月の賃金台帳」の提出が中心でした。ある時点のスナップショットです。
第20回は違います。補助事業実施期限日を終点とした連続12か月と、その前年同月の12か月を比較します。一時点ではなく、12か月分の給与支給総額を月単位で管理できている状態が前提になります。
「賃上げしているつもり」は通用しません。公募要領上の要件として数字で説明できる状態か——それが問われます。
補助上限額への影響を見落とさないこと
賃金引上げ特例は、補助上限額に直結します。
通常枠の補助上限は50万円。賃金引上げ特例に該当すると、150万円の上乗せがあります。インボイス特例と両方に該当する場合は、合計で200万円の上乗せです。
上乗せ額が大きいからこそ、達成できるかどうかを先に確認する必要があります。「もらえる金額が大きいから申請しておこう」は、後から要件を満たせないリスクを抱えます。
確認すべきことは、4つです
自社に従業員がいるか。対象期間の給与支給総額を月単位で追えるか。賞与・残業代を含めた総額を整理できるか。従業員1人あたりで年平均3.0%または2.0%の増加を達成できるか。
この4点を確認してから、特例・加点の活用を検討してください。
一言でまとめるなら
第19回:「最低時給を上げたか」
第20回:「会社として給与支給総額を継続的に増やしているか」
確認の軸が、個人の時給から会社全体の人件費管理へ移ったということです。
補助金は、経費の一部を補填する制度ではありません。販路開拓や業務効率化を通じて事業を伸ばし、その成果を従業員にも分配していく事業者を後押しする制度です。第20回の賃金引上げ要件は、その問いを申請者に対して直接突きつけています。
まず自社の「給与支給総額の12か月分」を整理するところから始めてみてください。
行政書士阿部隆昭




