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カーボン紙を使って複写した自筆証書遺言も無効ではない、でもどうしてカーボン紙を使った?|行政書士阿部総合事務所

September 15, 2013
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約 4 分

(最判平5・10・19判時1477-52)
遺言の全文、日付および氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、自書の方法として許されないものではない。

(最判平5・10・19判時1477-52)
一通の証書に二人の遺言が記載されている場合であっても、両者が容易に切り離すことができるときは、本条によって禁止された共同遺言にあたらない。

 

自筆証書遺言の方式を定めた民法968条、共同遺言の禁止の民法975条の判例です。

カーボン紙を用いても遺言書としての方式違背はないので無効ではないというもののと、容易に切り離しができれば共同遺言にならないというもの。

いずれも試験対策上は、超有名判例ですので絶対落とすことはできません。

でも、一つの肢として出題されたら正誤の判断は容易ですが、実際のところかなりグレー、というか事案限定の判例なのでそのまま現実問題として使うのは憚られます。

 

夫婦ふたりの遺言書って一枚でいいですか?って聞かれても、もちろん答えはダメとなるでしょう。

簡単に切り離すことができれば有効だって最高裁が認めているので問題ないですよ、とは答える事ができない。

自筆証書遺言として誰にも完成品を見られることのない形式で遺されても、ホントに支障のないものとして書いたのか開封するまでわからない。

 

カーボン紙を使って遺言書を作ったんだけど大丈夫かな、っていう問い合わせがあったとして、これもちょっと積極的にOKですとはならない。

そもそも、カーボン紙で遺言書を残すってどういう状況なんだろう。自筆証書遺言として封をしてしまった後の自身の備忘としての意味合いなのかな。

カーボン紙の意味を例の辞書でみたけどたいしたことがなかった。

wikipediaによればカーボン紙(カーボンし)とは、書類の間に挟み複写を行うために用いる感圧紙である。略して「カーボン」ということもある。筆圧が感圧紙を通じて下の紙に伝わり、感圧紙が裏写りする仕組み。

コピーであれば筆圧や筆跡などが平坦化されるのと違って、カーボン複写であればそれは元の紙とそう遜色ないものになる。

 

最高裁は、上告代理人がした下記の主張を認めませんでした。

「カーボン紙による複写は、例外なく筆圧、筆勢、筆記具の相違が分からない平板な筆跡になってしま」う。

「後で真正な筆跡であるか判別がきわめて困難」

「カーボン紙による複写にも、電子複写機によるコピーが自書といいがたい根拠となる事柄がそのまま当てはまる」

 

仕事柄、以前カーボン紙を日常使用していたことがありますが、カーボンコピーされた後の紙に残された筆跡等と、電子コピー後のそれとは実際のところかなり違いますよね。

ピッチングマシンの投げたボールと人間が投げたボールぐらいとの差といいますか。

たとえがちょっとアレでしょうか。

なんというか、似て非なるものです。

 

 

参考までに↓が最高裁判決です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319133120634455.pdf

本件遺言書は、Dが遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものであるというのであるが、カーボン紙を用いることも自書の方法として許されないものではないから、本件遺言書は、民法九六八条一項の自書の要件に欠けるところはない

本件遺言書はB五判の罫紙四枚を合綴したもので、各葉ごとにDの印章による契印がされているが、その一枚目から三枚目までは、D名義の遺言書の形式のものであり、四枚目は被上告人B名義の遺言書の形式のものであって、両者は容易に切り離すことができる、というものである。右事実関係の下において、本件遺言は、民法九七五条によって禁止された共同遺言に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。

 

 

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行政書士行政書士阿部隆昭
創業支援と資金調達に強い東京都北区赤羽の行政書士阿部隆昭。
事業計画書作成支援、創業融資申請サポート、補助金助成金申請、契約書作成、ビザ申請など、中小企業支援業務をメインに業務を行なっています。
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