行政書士阿部総合事務所

認定経営革新等支援機関(中小企業庁)

21.5%が抱える「在留期間の上限」問題──外国人労働者の人材育成設計

February 8, 2026
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外国人雇用で企業が直面する4つの実務課題

― 厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査」から読み解く

外国人雇用は、制度の理解だけで完結するテーマではありません。企業側には、採用後の運用体制、期限管理、社内整備が求められます。

厚生労働省が公表した「令和6年外国人雇用実態調査」では、実際に外国人労働者を雇用する事業所が感じている課題が統計として示されています。

本記事では、調査結果のうち企業実務に直結する4項目に絞り、申請取次行政書士の視点から整理します。

出典:厚生労働省「令和6年 外国人雇用実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_61317.html


調査で示された「企業側の課題」上位4項目

厚生労働省調査では、外国人労働者の雇用に関して、事業所側が感じている課題として次が上位に挙げられています。

・日本語能力等のためコミュニケーションが取りにくい:43.9%
・在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑:24.7%
・在留資格によっては在留期間の上限がある:21.5%
・文化・価値観等の違いによるトラブルがある:20.9%

これらは感覚ではなく、実際の雇用現場の統計データ。企業はこの課題を前提に、自社の雇用管理を制度要件と整合させる必要があります。


① コミュニケーション課題(43.9%)は現場運用の問題

最も多い課題が「日本語能力等によるコミュニケーション」。

これは単なる語学の問題ではなく、現場での指示系統、安全管理、業務教育に直結します。

外国人雇用では、業務指示が不十分だと労務上のトラブルにつながります。また、教育内容や説明経緯が記録されていない場合、企業側の管理責任が問われる場面もあります。

したがって、企業は現場任せにせず、社内手順として説明手順・記録方法・フォロー体制を整えることが実務上の要点です。


② 申請事務負担(24.7%)の要因は社内整備不足

「在留資格申請が煩雑」という声は多いですが、実務上の負担の意味するところは書類作成事務そのものではないと考えられます。

企業内で次の点が整理されていない場合、申請実務の負担が過度に重くなるケースが多いのです。

・職務内容が社内で明確に定義されていない。
・雇用契約や給与体系の説明資料が整っていない。
・期限管理や更新スケジュールが属人化している。

申請実務とは、単に書類を作る作業ではなく、企業内部の実務を入管制度に整合させる工程に他なりません。


③ 在留期間の上限(21.5%)は人材育成設計に影響する

厚生労働省調査では、事業所側の課題として「在留資格によっては在留期間の上限がある」が21.5%と示されています。

在留資格によって在留期間に上限がある場合、企業は長期雇用を前提にした人材育成を日本人と同じ設計で運用することができません。これは企業理念等の問題ではなく、制度上の制約です。

この制約が直接影響するのは、次の3点です。

・人材育成計画(教育投資の回収期間)
・配置計画(担当業務の継続性)
・雇用管理(更新・変更の許可を前提にした社内手順)

参考までに、企業側が人材育成にどれほど投資しているかの一次統計データを確認してみます。厚生労働省の「能力開発基本調査」では、企業がOFF-JT(職場外研修)に支出した費用の労働者1人当たり平均額が 約1万5,000円 となっています(自己啓発支援費用は約4,000円)。これは教育投資の最低ラインを示す一次統計データです。

また、企業実務では、在留期限を本人任せにすると、更新や変更が不許可になった時点で、配置・業務・顧客対応が停止するという重大な事態に陥ります。したがって、採用前から在留資格や在留期限などの「制限」を前提に社内運用へ組み込む必要があるのです。

さらに、人材育成の観点では、次の視点が重要です。

・長期育成を前提にする業務に配置する場合は、在留期限を踏まえた代替要員・引継ぎ計画を持つ
・教育投資が大きい場合は、在留期限と更新見込みを前提に、段階的に任せる業務範囲を設計する
・配置転換や職務内容の変更が発生する場合は、変更の都度、許可要件に影響するかを確認する手順を社内に置く

「在留期間の上限」は、事務手続ではなく、企業側の人材育成と配置の設計条件の問題です。採用前から期限管理を運用に組み込み、職務内容と雇用条件を制度要件と整合させることが、事業継続上の実務ポイントになります。


④ 文化・価値観トラブル(20.9%)はルール明文化で予防する

厚生労働省調査では、「文化・価値観等の違いによるトラブルがある」と回答した事業所が20.9%となっています。

文化や生活習慣の違いは外国人雇用において必ず発生します。重要なのは文化差そのものを問題視することではなく、企業側が運用として管理可能な形に整備することです。

企業が行うべき対応は次のような社内整備です。

・就業規則や服務規律を外国人にも理解できる形で説明する
・現場担当者ごとに説明内容が変わらないよう運用手順を統一する
・相談窓口(人事・総務・管理者)を社内で明確にする
・問題が発生した際には経緯を記録し対応手順を定型化する
・安全ルールや禁止事項は掲示や書面交付で周知する

文化差を否定するのではなく、企業側が就労環境のルールを明文化し、説明と記録を残すことが実務上の要点です。


まとめ:外国人雇用は採用後の運用体制が企業の継続性を左右する

厚生労働省調査が示す通り、企業が直面する課題は制度論ではなく運用体制の整備に集中しています。

・コミュニケーション体制
・申請実務を支える社内整備
・在留期限を前提にした配置設計
・文化差を前提としたルール明文化

外国人雇用は採用時点で完結する話ではありません。採用後の運用体制を整えることが企業の継続性と法的リスク管理に直結するのです。


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