公開日:2026年4月17日|行政書士阿部総合事務所

動物病院のものづくり補助金申請を、行政書士としてサポートした案件があります。
結果は不採択でした。
採択された案件の話は書きやすい。でも不採択になった案件の話こそ、次に申請を検討している院長先生に届けるべき内容だと思い、書くことにしました。
守秘義務の範囲で書けることだけを書きます。
どんな案件だったか
東京都内の動物病院です。
院長先生は、他の補助金支援会社から送られてきたDMでものづくり補助金の存在を知り、説明会に参加しました。ただ、最終的には「知っている人に頼みたい」という理由で、当事務所に依頼が来ました。
導入を検討していたのは医療機器です。投資規模は相応のものでした。
院長先生の「この機器を入れたい」という意欲は本物でした。診療の質を上げたいという思いも十分に伝わりました。
それでも、不採択になりました。
なぜ不採択になったか
振り返ると、問題は事業計画書の「革新性」の説明にありました。
ものづくり補助金の審査で問われるのは、「新しい機器を入れたい」という意欲ではありません。「その機器の導入によって、今まで提供できなかった何が実現するのか」という革新性です。
動物病院のケースで言えば、「CTを導入したい」では足りません。「CTを導入することで、これまで紹介転送していた〇〇という疾患の初期診断が院内で完結できるようになり、地域における動物医療のアクセスが変わる」という文脈が必要です。
当該案件では、この「革新性のストーリー」が十分に組み立てられていませんでした。
機器の性能や価格の説明は詳しく書けていました。でも「なぜこの病院がこの機器を入れることが革新的なのか」という、病院固有の文脈が薄かった。
もう一つの問題
採択率が下がっている時期の申請でした。
ものづくり補助金の採択率は回次によって大きく変動します。申請数が多い回は当然競争が厳しくなります。
「間に合う回に出す」という判断は正しかった。でも、準備期間が十分ではない状態で出してしまったという反省があります。
事業計画書は「書いた」けれど、「読まれることを前提に磨き込んだ」状態ではありませんでした。
審査官の立場で計画書を読む
これは不採択になって改めて意識するようになったことです。
審査官は何百件もの事業計画書を読みます。その中で動物病院の案件は、「医療機器を入れたいクリニックの申請」として一括りに見られる危険があります。
その中で際立つためには、「この病院だからこそこの投資が意味を持つ」という固有のストーリーが必要です。
地域で初めての設備なのか。今まで断っていた患者を受け入れられるようになるのか。紹介ネットワークの中でどんなポジションを取れるのか。設備投資後の3年間で付加価値額がどう変わるのか。
これらを院長先生自身が語れる状態になっていないと、計画書に説得力が生まれません。
不採択の経験から変えたこと
この案件以降、当事務所での動物病院の補助金サポートで特に時間をかけるようにしたことがあります。
ヒアリングを増やした
「どんな機器を入れたいか」だけでなく、「今の診療で何が限界か」「入れた後の3年間で何が変わるか」「地域の競合病院との違いは何か」を丁寧に聞くようにしました。
計画書を「審査官目線で読む」工程を入れた
書き終わった計画書を、院長先生と一緒に「獣医療を知らない審査官が読んだとき、分かるか」という観点で読み直す作業を入れました。専門用語の多用、論理の飛躍、数字の矛盾——これらは書いた本人には見えにくい。
採択可能性の低い案件には正直にそう伝える
「革新性として説明できる要素がこの申請内容では弱い」と感じた場合は、申請を急かされても正直に伝えるようにしました。着手金をもらってから不採択では、お互いにとってよくない。
動物病院のものづくり補助金、採択されやすい案件の共通点
不採択を経験して見えてきたことがあります。
採択されやすい案件には共通した要素があります。
設備投資の「必然性」がある
「この機器を入れなければ、今後の経営に支障がある」という危機感と、「この機器を入れることで、具体的にこういう診療が変わる」という展望の両方が揃っている案件は強い。
院長先生が計画書の内容を自分の言葉で語れる
計画書に書いてあることを口頭でも説明できる。審査官に「この部分を詳しく教えてください」と言われたときに、計画書以上の情報を話せる院長先生の案件は通りやすい。
投資後の数値目標に現実感がある
付加価値額の年平均+3%という目標が、実際の診療単価・患者数の見込みと整合している。「とりあえず目標値を書いた」ではなく、診療計画の延長線上にある数字を使っている。
今から申請を検討している動物病院の院長先生へ
23次の締切は2026年5月8日です。
申請を急いでいるなら、まず「革新性として説明できる事業の核心は何か」を確認してください。
機器を入れたい気持ちと、補助金申請として採択される計画書は別物です。機器が決まっていても、それだけでは計画書にはなりません。
当事務所では、採択可能性の見極めから始めます。「この状況で申請すべきかどうか」も含めて、正直にお答えします。
関連記事 → ものづくり補助金23次、締切まで3週間。今から間に合うか? → 動物病院のCT・超音波導入で後悔しないための経営設計 → 「完全成功報酬ではないのですか?」と聞かれたので、正直に答えます
行政書士阿部総合事務所 認定経営革新等支援機関|東京都地域創業アドバイザー 補助金申請支援実績75件 https://abeoffice.net/




